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抗がん剤曝露対策協議会

ご挨拶Salutation

理事長 垣添 忠生

国立がんセンター名誉総長
公益財団法人 日本対がん協会会長

理事写真 抗がん剤は強い毒性をもつ薬物であることはよく知られている。がん細胞を殺す作用と同時に、骨髄、消化管細胞、毛根など細胞分裂の盛んな正常細胞にも効果が及ぶ。これが抗がん剤の副作用につながる。このために抗がん剤治療はときに、かなりつらい治療となる場合もある。がん患者さんの場合には、治療前にこのことがよく説明され、患者さんは覚悟の上で治療を受けることになる。
 抗がん剤は皮膚に付着して吸収されたり、揮発性の薬物の場合には吸入されたりして、抗がん剤調製にあたる医療従事者にも害が及ぶことが知られてきた。
 欧米では1980年代頃より、医療従事者の抗がん剤曝露防止のための、各種の働きかけやガイドライン作りが進められてきた。
 わが国では、抗がん剤調製にあたる薬剤師の間では、比較的早くからこの事実が知られていて、クリーン・ベンチ内で抗がん剤を調製し、ガウン・テクニックで身を護ること等が実践されてきた。
 ところが医師や看護師、とくに中小病院で働く看護師の間には、必ずしもこの問題が十分に認識されてこなかった。がんの新患が日本全体で年間80万人を超す時代となり、どこの病院でも抗がん剤調製に迫られる可能性がある。
 また、国の方針としても、患者・家族の希望としても、在宅医療が今後一層進むことは確実である。すると、がん患者さんと生活を共にする家族にも、抗がん剤曝露の危険性が生ずる。
 こうした状況、背景から、抗がん剤の使用に関わる医師、看護師、薬剤師などを中心とした多職種チームから成る「抗がん剤曝露対策協議会」が設立された。2014年4月30日のことである。
 この協議会はNPO法人化を目指して手続きも始めた。この目的のために強固な組織を作り、抗がん剤曝露対策に関する既存のエビデンスと新規エビデンスを蓄積し、抗がん剤がより安全に使用できるような環境作りに邁進することとなる。
 2014年度中には、日本がん看護学会、日本臨床腫瘍学会、日本臨床腫瘍薬学会で合同ガイドラインが策定される予定である。
 知識やエビデンスの普及に向けたシンポジウムや講演会の開催、病棟の汚染状況や健康被害の実態調査など新たなエビデンスを求めるための研究など、当協議会が中心となって多面的な活動を展開する予定である。
 折しも、2014年5月29日付で、厚生労働省労働基準局安全衛生部・化学物質対策課長名で、関係団体の長あての通達が発出された。抗がん剤曝露対策のための安全キャビネットの設置、閉鎖式接続器具の使用、ガウン・テクニックの徹底等が記載されている。曝露対策を進めるには若干の費用がかかるが、この通達は病院長や事務長等の皆さんに事態を認識していただくうえで重要だと思う。
 この協議会の活動を進めることにより、抗がん剤曝露対策の意識が関係者の間で共用され、さらに一般の方々にも認識されることにより、クリーンな環境で抗がん剤が使われる社会の実現を目指したい。


NPO法人抗がん剤曝露対策協議会
-Anti Exposure Project of Anticancer Agent-
抗がん剤曝露対策協議会

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